鬼丸凜太の随想&創作&詩&日記

サウダーデを心に沈めた漫ろ筆。日曜詩人としての余生。

サンジュウトマトの詩

サンジュウトマトとおまえが何度も言うのを聞き流していたのだが

何気なくそちらへ目をやると そこには

「三重トマト」と書かれていた

三重県のトマトのことだった

 

頓馬な妻よ そのとき俺に湧いた思いをこそ

サウダーデと名付けようか

聞きかじったこの言葉 

日本語じゃないからかえってふさわしい気もするのだ

 

田舎の庭の日向に延べた筵(むしろ)の上で

ままごと遊びを重ねてきただけの

愚かな夫婦にちがいない 俺たちは

その歳月(としつき)は五月雨色をしている

 

五月雨色の帳りの中で

指切りげんまんしようか

何を約すか 

それはおまえが決めていい

 

最期の日のままごとに

互いの髪のひと房を交し合う夢 俺はときどき見るのだが

そのひと房に 水仙の花がただひともと

そっとそえられてあるのもいいな

 

さっきお隣りからいただいた水仙は 越前水仙と言ってたね

そこで俺は想ってみるのだ

「越前水仙」の字面をおまえが初めて見たならば

どう読み間違えてくれるのだろう